中国の北の方、モンゴルには広い草原が広がっています。そこにすむ人たちは昔から、羊や牛や馬などを飼って、くらしていました。
このモンゴルに、馬頭琴という楽器があります。楽器の一番上のところが馬の頭の形をしているので、馬頭琴と言います、モンゴル語では「モリンホール」
と言います。
それには、こんな話があるのです。


モンゴルの草原に、スーホという貧しい羊飼いの少年が住んでいました。
スーホは、毎日おばあさんを手伝って、羊を広い草原につれていきます。
スーホは、とても歌がうまく、ほかの羊かいたちにたのまれて、よく歌を歌いました。スーホのうつくしい歌声は、草原をこえ、遠くまでひびいていくのでした。


ある日スーホが羊を連れて草原に行くと、
そこで真っ白い子馬と出会い、家につれて帰ってきました。
スーホはその子馬を一生懸命育てました。
子馬はすくすく育ち、とてもきれいでたくましい白馬になりました。


草原では、年に一回「ナーダム」を行います、「ナーダム」というのは日本の
「お祭り」のことです。大体8月に行います。この「ナーダム」には三つの遊びがあります。それは「モンゴル相撲」、「競馬」、「弓」です。
ある日、王様が競馬大会を開きました。
一等になると、なんと王様の娘と結婚できるというのです。
そこにスーホは白い馬と出場することにしました。
そしてみごと、先頭を走っているのは、スーホと白い馬、一等になりました。
でも王様は、娘と結婚させるという約束をまもりませんでした。
その上、王様は白い馬を自分のものにしたくなり、スーホを呼び出し、
「お前に銀貨3枚あげるから、白い馬を置いてさっさと出て行け」!と
銀貨3枚をスーホの前に放り投げました。

そして、スーホは「私は競馬しに来ました、馬を売りに来たんじゃない」と言いました。スーホは大様の家来たちにさんざんなぐられ、お城の外へ放り出されました。
王様は満足げに白い馬を見つめ、その上に乗ろうとしたところ、振り落とされて尻を打たされました、王様はかんかんに怒り、「あのけしからん白い馬を射ち殺せ!」と叫びました。そして、白い馬は兵隊たちにつぎつぎに、矢がささりました。


白い馬は全身から血を流してスーホの元へ帰ってきました。
次の日、白馬はしんでしまいました。
白馬は、ゆめの中でやさしくスーホに話しかけました。
「そんなに、かなしまないでください。それより、わたしのほねや、かわや、すじやけを使って楽器を作ってください。そうすれば、わたしはいつまでも、あなたのそばにいられます、あなたを、なぐさめてあげられます」
それで、楽器はできあがりました。これが、馬頭琴です。
それから、モンゴルの草原に、悲しげな楽器の音色が響くようになり、モンゴル中に広まりました。そして、その音色が聞く人々の心をゆりうごかすのでした。